アカデミックディテーリングとは

患者の安全確保と費用対効果を考慮した医療を推進するための薬剤師の役割として、海外ではアカデミック・ディテーリング(AD)の活動が普及し、効果を上げている。

ADは、医療者や患者、特に医師に対する双方向的な情報提供の新たなアプローチで、アカデミック・ディテーラーとして訓練を受けた臨床薬剤師がエビデンスに基づいた医薬品の公正中立な適正使用情報をわかりやすく提供する活動である。

その目的は特に医師が医薬品の有効性、安全性、費用対効果を考慮した適切な判断が行えるように処方支援するもので、費用と効果の両面から処方の改善効果が報告されているが、日本はこれからという状況にある。

アカデミック・ディテーリングの発祥

米国での最初の研究(1981年)

米国では1981年に最初の研究がDr. Jerry Avorn らによって行われた。

それは3つの薬剤(プロポキシフェン、セファレキシン、パパベリン)の過剰処方を減らすための医師へのAD教育プログラムを実施することの有用性を示すコントロール対象の比較試験であった。実際にこれらの薬を処方している435人の医師に対して、介入群(2群)と対照群(1つ)3つの群にランダムに割り付けられた。介入群は印刷した資材を4ヶ月間に6回郵送する群と同じ印刷した資材を使って6ヶ月間に2回訪問して、ADを行う群に分けられた。

研究の結果

ADを提供された医師は、対照と比較して、標的薬の処方を14%有意に削減し、対照群と比較して、大幅なコスト削減につながった。資材を郵送したのみの群は、標的薬の減少につながらなかった。以上より、学術的資材に基づいたADは、薬物療法の決定の質を改善し、不必要な支出を削減するための有用で費用効果の高い方法であったと報告されたのを契機にADが世界に広がるきっかけとなった。

豪州の研究(1991年)

豪州では1991年に政府の資金援助によるADプログラムが、南オーストラリア州アデレードの高齢者急性期ケア教育病院(200床)で開始された。アデレードの特定の地域で開業している医師を対象として、ADプログラムが提供された。

約210人の医師への定期訪問が6ヶ月~9ヶ月ごとに行われ、治療に関する個別のADサービスが訪問の度に行われた。具体的には、NSAIDsを使っている患者をレビューし、エビデンスにもとづいたリスク低減策、例えば、NSAIDsと他の併用薬との相互作用に注意すること、NSAID治療を開始するときは、例えば半減期を考慮し、臨床的に適切ならアセトアミノフェンの使用を検討することであった。主なアウトカム指標は、NSAID使用による胃腸障害の入院割合として、AD効果に関する臨床研究が開始された。

研究の結果

その結果、NSAIDプログラムの実施と同時に、消化管疾患の入院数が減少傾向となり、AD訪問開始から5年間で、入院者数が70%減少した。同じ期間において、対照地域では、入院割合に顕著な変化は見られなかった。以上より、医師とface to faceによる継続的なADサービスは、5年間にわたって処方されたNSAIDの処方における消化管有害事象による入院の減少に貢献した。

この報告を契機に豪州でのADプログラムは拡がっていった。

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