設立への思い

代表理事 小茂田昌代

謹啓 時下ますますご清祥でご活躍のこととお喜び申しあげます。

1978年、東京理科大学薬学部を卒業するとき、「これから医薬分業が進むから、薬剤師の業務は面白くなるよ。」と恩師から言われたが、それでも薬剤師業務に魅力を感じることができず、研究職に就いた私は、その後、結婚し、母となった。

しかし、職場からは通勤1時間半以上かかり、結局、研究職を諦め、自宅近くの高齢者専門病院に転職した。
それから7~8年、子育てと調剤に明け暮れ、1997年、病棟で服薬指導を開始した。病棟へ行くなり、看護師から「薬の説明をしても、わかる患者さんはいないわよ」との一言に、何をしたらよいのか途方に暮れた。

そして、脳卒中で見当識障害のある患者が、昨日から眠ってしまって起きず、レベル低下した。「昨日、●●追加したけど、薬と関係ないよね。」と、医師がせっかく聞いてくれた質問に対して、全く答えられなかった。その後、その薬は医師の判断で中止され、患者の意識は回復した。その薬は肝代謝の薬で、患者は肝障害があり、自分の無力さを痛感した。

そこで、意思疎通の図れない高齢者を副作用から守るために、患者に活用すべき情報をわかりやすくいつでも検索できる医薬品情報活用システムを必死に開発した。そして、全入院患者の病態変化と薬との関連について、即座に回答を可能とする医薬品情報活用システムの開発により、ようやく病棟に居場所を見つけられた。

その後は、少しずつ患者のリスクを予測できるようになり、医師に検査の依頼や、看護師に観察を依頼しているうちに、いつのまにか医師が「この患者が不穏で安定剤使いたいけど、何がいいかな?」と聞いてくれるようになり、全患者に担当薬剤師が配置された。

そのときから、私の「医薬品情報活用システム」をすべての薬剤師に届ける思いは22年の長い時間を経て、今ようやく実現しようとしている。

そして、2008年に教員となって米国の薬学部に視察に行き、医師が診断し、薬物治療は薬剤師が主導している現状を目の当たりにし、医師の処方を是正するアカデミック・ディテーリング活動を知った。そして、薬の基礎薬学特性に着目したアカデミック・ディテーリングは、必ず日本の薬剤師の医薬品情報提供を変えると確信する。
私の長年の思いに、少しでも共感いただき、ご支援いただければ幸いです。

敬具

2021年10月1日
一般社団法人日本アカデミック・ディテーリング研究会
代表理事 小茂田 昌代